中小企業診断士の三田元気です。
今日は令和2年度二次試験の事例Ⅰの再現答案です。
正答が発表されないのが特徴の二次試験、受験生の方は非常にモヤモヤしていると思います。
そんな二次試験の学習のポイントは自分ひとりで悩まないこと!
他人の回答も読んでみて新たな気づきを得て、今年度の合格をつかみ取ってください。
事例Ⅰは特に質問の意図がわかりにくく、苦労する科目かと思います。
迷ったときこそ、「問いや与件文に素直に答える」「A社の状況に沿いながら、使える一次知識は使う」といった点がポイントになってくるのではないでしょうか?
令和2年度の事例Ⅰは、特に何を聞いているのかわからないような問も多く(第2問は単にプロセスを解答したらよいのか?、第3問は事例Ⅱ的な解答になってしまってもよいのか?)、非常に難しかった印象です。
得点開示の結果は、65点。可もなく不可もなくといったところでしょうか・・・
◆試験問題はこちらからダウンロードできます↓
第 1 問(配点 40 点)以下は、老舗蔵元 A 社を買収する段階で、企業グループを経営する地元の有力実業家である A 社長の祖父に関する設問である。各設問に答えよ。(設問 1 )A 社の経営権を獲得する際に、A 社長の祖父は、どのような経営ビジョンを描いていたと考えられるか。100 字以内で答えよ。(設問 2 )A 社長の祖父が A 社の買収に当たって、前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由は何か。100 字以内で答えよ。
再現答案
(設問1)経営ビジョンは、A社長に後継者としての経験をつませつつ、優秀な人材を活用し、日本の文化・伝統に憧れて訪れる観光客に対し老舗ブランドを訴求し集客、酒造業の再建と新規事業で地元経済の活性化を目指すこと。
(設問2)理由は、①従業員の雇用責任を果たすという前経営者意向を汲み円滑に買収を進める為、②造り酒屋のノウハウを承継し支援を得る為、③人材資源を承継し競争力を維持する為、④従来からの取引先の信用を得る為。
注意した点
(設問1)
- 時制と主語に注意(時制:A社買収時=過去、主語:A社長の祖父)。
- A社長の祖父は、地元の名士として地域への想いは強いので、必ず「地元経済の活性化」は入れる。
- A社長がグループの総帥になるステップとして、A社を経営させようとしているといった思いを持っているように感じたため、その要素を入れた。
(設問2)
- 「買収時」と「買収後の統合段階(PMI)」それぞれの視点で解答を組み立てた。
- 「前経営者の意向」を大切にしようとしている祖父の姿勢は記載した。
- トレンドであるM&Aを問うた設問なので知識も確認しているかと思い、残りは一般的な内容を記載した。
振り返り
(設問1)
- A社長の祖父は、旅館等も手掛けるグループの総帥なので、「グループ企業とのシナジー発揮」の視点は入れるべきだった。(実際にシナジーは発揮され、A社売上は伸びている)
- 「インバウンド」といった「機会」はキーワード。こちらも入れるべきだったのだろう。
(設問2)
- 一般知識が多めの解答になってしまった。A社固有の事情でこのようにしたほうがよい理由を追加すべきだった。(具体的には、「グループに酒造りの経験がないこと」)
- 「買収時」と「買収後の統合段階(PMI)」それぞれの視点で解答を心掛けたが、予備校模範解答を見ると、PMIの視点書かれた内容が太宗。個人的には、「買収時」の視点も必要だと思うが。
第 2 問(配点 20 点)A 社では、情報システム化を進めた若い女性社員を評価し責任者とした。ベテラン事務員の仕事を引き継いだ女性社員は、どのような手順を踏んで情報システム化を 進めたと考えられるか。100 字以内で答えよ。
再現答案
手順は、①ベテラン女性事務社員から複雑な事務作業や取引先との商売等の業務内容を引継ぎ、②文書化により暗黙知の形式知化を図り、③業務要件を整理しシステム化、④システムは試用し不具合点を改善、というもの。
注意した点
- 質問の意図がよくわからなかったので、システム化に必要なプロセスをウォーターフォール型で記載をした。
- キーワードとして、「暗黙知の形式知化」を行うプロセスは外せないと考えた。
振り返り
- ベテラン事務員は、複雑な事務作業に加えて「取引先との商売」も熟知していたので、「データベース化」のプロセスがあってもよかった。
- 与件文にはあえて「複雑な」事務作業とあるので、システム化の中で簡素化の検討もできた。
- 上記記載によって文字数が足りない分は、④を削ってもよかった。
- 質問の意図がわかりにくい問題だったが、本番で焦ることなく設問要求に沿って素直に解答できたのはよかったと思う。
第 3 問(配点 20 点)現在、A 社長の右腕である執行役員は、従来のルートセールスに加えて直販方式を取り入れ売上伸長に貢献してきた。その時、部下の営業担当者に対して、どのような能力を伸ばすことを求めたか。100 字以内で答えよ。
再現答案
必要な能力は、①取引先の新規開拓力、②顧客接点を生かしニーズを汲むコミュニケーション能力、③杜氏、蔵人と連携しニーズに合う商品の開発力、④提案力であり、愛顧向上を図り、固定客化につなげる。
注意した点
- 直販方式に変えた目的に沿って必要な能力を書きだすことを意識した。
振り返り
- 上記の注意点が意識された解答とは思えない・・・(苦笑)
- ①~④の粒度、解答ボリュームがバラバラでバランスの悪さを感じる(苦笑)
- 直販化の理由として、「新規顧客の開拓」「顧客接点を設けることでのニーズ収集」「ニーズを杜氏、蔵人と連携し魅力ある商品の開発」「開発した商品を顧客へ提案」することなどが考えられ、そのために、「コミュニケーション能力」「行動力・積極性」「プレゼンテーション能力」が必要、と素直に書けばよかった。
- また上記能力を伸ばす具体的な施策(研修等)も書いた方がよかったかもしれない。
第 4 問(配点 20 点)将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となる A 社長が、グループ全体の人事制度を確立していくためには、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士とし て 100 字以内で助言せよ。
再現答案
留意点は、①異なる事業がある中、公平な基準設定で納得感を持たせる事、②部分的な成果主義導入でモラール向上を図る事、③部門連係を評価し組織活性化を図る事、④多様性に配慮した制度設計で人材定着を図る事。
注意した点
- A社単独ではなく、グループ全体の人事制度であることを意識した。
- グループ全体なので多様な事業を包含していることや、A社でも多様な人材が従事していることを踏まえ、人材の多様性にも配慮した人事制度を提案した。
- 人事制度なので、「採用」「配置」「能力」「評価」「モラール向上」の各視点からA社グループに合う内容を記載した。
- それぞれの制度のもたらす効果・目的についても併せて記載した。
振り返り
- グループ全体の制度であるため、「評価」の観点では「評価者を育成する」視点があってもよかったかもしれない。(現状は、A社長がA社社員の働きぶりを直接評価している。)
- A社でなくてもかけてしまうような一般的過ぎる内容になってしまった感もあるため、「A社固有事情」をもう少し記載すればよかった。
終わりに
令和2年度試験合格者による再現答案と回答の注意点、振り返りを行ってまいりました。
65点という合格ギリギリの答案、いかがでしたでしょうか?
落ち着いて一歩引いて考えればもう少しよい解答ができたのでは、と思いますね。
本番では難しい・・・
令和3年度以降の受験生に少しでも参考になれば、幸いです。
受験生向け相談会もやっています↓こちらもご参照ください。
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